海から陸からハウステンボスに近づくにつれて目に飛び込んでくる塔。広い場内に入っても、街のどこからでも見える塔。今回はハウステンボスのシンボルタワー、ドムトールンの話題です。
60年の歳月をかけて建造
最近、インターネット上に普及したブログ。内容は日記や旅行記が多いようで、なかにはオランダ旅行記もあります。それを読むと「この塔、ハウステンボスで見たことありませんか?」というような文章とともに、しばしばドムトールンが紹介されています。それほど、この塔は印象が深いということでしょう。
オランダの古都ユトレヒト。ドムトールンはここに立つ、同国で最も古い教会・ドム教会の鐘楼です。1321年から1382年にかけて造られ、鐘楼としては国一番の高さ112メートルを誇ります。
塔内部には展望台まで階段が設けられており、現在もガイド付きで上ることができます。その段数、465段。所によっては人ひとりしか通れない狭さしかありませんが、展望台からの眺めは息を切らせて上る甲斐がある、とても素晴らしいもの。高い山がないこの国ならではの地形のおかげで、天気が良ければ30キロ以上も離れた首都アムステルダムや世界有数の港町ロッテルダムまで見渡せるそうです。
ドムトールンと教会は現在、別の建物のように分かれて立っていますが、かつてはひとつながり。17世紀の大暴風雨で被害にあい、間にあった聖堂が崩れたために今のような姿になりました。ここハウステンボスでいえばドムトールンとパサージュの間に両建物をつなぐ聖堂があり、その横にさらに大聖堂があることになります。
時代の最先端を行ったハイテクタワー
ハウステンボスのドムトールンですが、高さは105メートル。80メートルの所に展望室を設けています。105メートルにしたのは、景観を考え、街並みとのバランス点を探った結果です。
正面から塔に向かいます。すると目の前にはエレベーターが。本国のドムトールンではこの部分がトンネル状の通路になっていてその脇に入口があり階段に続いているのですが、ハウステンボスでは階段の代わりにどなたでも快適に“登頂”できるよう高速エレベーターを設置。最大30人を乗せて展望室とわずか35秒で結びます。
でも、105メートルの高さがあると強風は大敵。塔がしなり、展望室が揺れるからです。すると人は不快になるばかりか、不安にもなります。
そこで取り入れたのが「チューンド・マス・ダンバー制振装置」。塔屋部分に設置したこの装置、いく層にも重ねたゴム製ダンパーが8.5トンもの重りを支え、塔の揺れを打ち消す方向へと動くことで、振幅を本来の半分から3分の1に低減します。
これを高層建築物に導入したのは国内初。その後、迎えたビルの高層化時代では同様の装置を設置するのが当たり前のようになりましたが、ドムトールンはその先鞭をつけたことになります。
そんなハイテクタワーですが、展望室からの眺めは本家に負けず壮大。ハウステンボスの街並みはもとより、大村湾とその向こうに広がる西彼杵半島の山々、空気が澄んでいれば遠く雲仙・普賢岳まで見晴らせます。
かつてこの街にあったライデン大学ハウステンボス校の留学生が口を揃えて日本にいるような気がしないといったハウステンボス。
特にあれを見ると、一瞬にして国に帰った錯覚に陥ると言わせたのがドムトールンでした。
高さが違おうと、なかがハイテクの塊であろうと、この塔は国境を越えて人にやさしく響く、心の塔なのかもしれません。